記者萎縮、民主主義の危機 (「特定秘密保護法案に言いたい」)

 原子力発電所では今や、正門の写真を撮影しようとしただけで、警備員が飛んでくるのが実態だ。原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」との目的が追加され、電力会社は実際には「軍事産業」とさえ言える。
 テロ対策を理由に出入りする車は車内を厳重にチェックされ、今でさえ原発内部の様子は分からない。
 東京電力福島第1原発事故でもあったように、実態を知るため身分を隠して潜入するのは正当な取材行為だと思う。

 だが、期間工として内部で見てきた過酷な労働実態を著した「自動車絶望工場」(1973年)に対しては、民間企業なのに、著名な評論家から取材法が「フェアでない」と批判された。
 91年には長崎県の雲仙・普賢岳の噴火取材で警戒区域に許可を得ずに立ち入り、書類送検された(起訴猶予)。だが、被災地の状況を伝えることはジャーナリズムの義務だ。
 「日本の兵器工場」(79年)では、正式に申し込んで取材したが、兵器工場では戦闘機、戦車、機関銃などの撮影も可能で、当時はそれなりに取材できた。しかし、当時でも数年後は困難になると感じた。

 実際、本格的なルポは90年代初めが最後だ。軍事産業の実態はますます分からなくなっている。
 特定秘密保護法案では人を欺いたり、施設に侵入したりして秘密を入手すると10年以下の懲役になる。正当な取材かどうかを判断するのは政府だ。規制して記者が萎縮したら、ジャーナリズムが支える民主主義は危うくなる。 
 
毎日新聞 2013年11月16日 東京朝刊 臺記者によるインタビュー記事

写真=雲仙・普賢岳、photo taken by Chris73 Wikimedia Commons
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