平等主義の崩壊を促すあらゆる力に抗するために

 
NHKの姿勢はジャーナリズムの自殺そのもの  

――人権無視があらゆるところで加速していますね。 

 戦後に掲げられた平等主義が崩壊しているといっていいでしょう。戦後民主主義は、自国の繁栄だけを求めたという欠陥がありましたが、それでも、二度と戦争をしない、労働者や女性の人権を守る、独占企業は解体するということを定着させる運動がたしかにそこにありました。 
 それが、ひっくり返されようとしている。問題なのは、右派ジャーナリズムがブロックを組み、政界・財界の方針に乗り、人権攻撃、市民・労働運動攻撃を仕掛けているということです。 
 それは今回の政治家のNHK番組への介入問題でも、おなじことがいえるのではないでしょうか。
(注;2001年1月、NHKが従軍慰安婦をとりあげた番組を放送する直前、自民党の安倍晋三幹事長代理、中川昭一経済産業相(当時)が議員会館にNHKの幹部を呼び出し、放送中止を求めた事件。安倍、中川両氏は、後になって番組の内容への介入の事実を否定し、中川氏は放送前に呼び出した事実すら否定したが、2005年に朝日新聞がスクープして事件の全容があきらかになった。朝日は、事件当時のインタビューをとりあげ、番組の内容に細かく注文をつけ「番組の放送中止まで求めた」と中川氏が証言したことを紹介している)

――その問題は、日本のジャーナリズムの行く末を左右する大事件に発展しそうですね。

 NHKの問題は、橋本元一新会長が「(番組について事前に政治家に説明するのは)一般論として好ましくない」とコメントしたりと、新たな展開を見せていますが、少なくともこれまで、海老沢前会長も放送総局長も「政治家への事前説明は当然だ」と発言してきた。元政治部の記者である海老沢氏が、そんなことを言っているんです。
 メディアが政治家、権力側に取材の承認を得るというのは、まさに検閲で、ジャーナリズムの自殺そのものです。 
 この発言は、日本でもっとも影響力を持つ言論機関であるNHKの言論をこれまでいかに政治家が左右してきたかということを、はっきり示しています。 

 さらにNHKがひどいのは、一方的にNHK側の見解だけをニュースで報道し、朝日側の反論をあつかわなかった。こういう「公共放送」の無視にたいし、視聴者が「受信料を払わない」というのは当然です。 

 言論にたいする権力側の圧力は、言論にとっての最大の問題です。権力と対峙し、これを批判し、規制するというのが言論の存在理由なのですから。 
 ところが、政治家の介入に対し反撃すべきメディアの多くが、この問題を朝日とNHKのケンカという形にすり替え、自分たちの問題として捉えていない。そればかりか、『産経新聞』『週刊新潮』などは、NHKの当該番組が従軍慰安婦の問題をあつかったことに矛先を向け、さらに記事を書いた朝日の記者を「過激派」呼ばわりしている。トロイの馬、権力の走狗……、現在のジャーナリズムはここまできているのです。 

――では私たちはこれらの事態にどう対処すべきか。 

 一つは、NHKが公的機関として機能するよう要求を出したり、監視したりする運動をおこすことでしょうね。不払運動もはじまっています。 
 もう一つは、ミニコミもふくめ、あらゆる媒体で、右派ジャーナリズムと対決することです。黙認していてはいけない。すでに言論戦がはじまっています。むこうは露骨に攻撃を仕掛けているわけですから。
『やさしさの共和国』花伝社、2006年9月
写真=NHK放送センター(東京都渋谷区)Photo taken by J o. GNU Free Documentation License
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