密漁で殺された日本人はいない

色丹島  北方4島の領海では、根室の漁師たちによる密漁事件が相次いできた。これまでにもすごい数の拿捕者が発生している。あるいは韓国との間の李承晩ラインを超えた漁師たちも、韓国政府によって大量に拿捕(だほ)されている。 
 これは他国の領海内に浸入して密漁した明確な犯罪行為であったが、ほとんどは拿捕だけで終わっている。

 最近拿捕された根室漁民を、私はサハリンの刑務所やシコタン島にある警察の留置所で面会し、その事実を確認している。
 またロシアの国境警備隊の若い砲手にもインタビューした経験がある。これは追跡劇のなかで射撃され拿捕された事件であり、船体を射撃されたあとに水没しきわめて珍しい事件があったときに取材したものだ。
 
 戦後50数年のなかで、日本の漁師が旧ソ連領海内、あるいは韓国領海内で犯罪行為を働いていて、乗組員が射殺された例はなかった。にもかかわらず日本では、領海外の船が「不審船」というだけで、射撃して沈没させ、全員を殺害した。この政府による「テロ攻撃」は、過剰な行動だったとわたしは考えている。
 これは証拠のないテロルの「首謀者」1人を殺害するために、トマホークをはじめとする大量のミサイルや爆弾を投入したアメリカと、そっくりのやり方である。アメリカにあるニューハンプシャー大学のマーク・ヘロルド教授の推計によれば、昨年12月6日の時点でアフガニスタンでの民間死者が3700人余となり、米英軍に殺害された無辜(むこ)の市民が、同時多発テロによりニューヨーク・ワシントンで殺害された人数を超えたという(『朝日新聞』2002年1月8日)。
 これ以外にも、老人・子ども・女性を含む数百万単位の難民の運命や、飢餓や病気による子どもの死亡などの悲劇が起こっている。その責任を誰が取るのか。
 
 外国船を攻撃して沈没させたのは、日本の戦後史のなかで初めてである。そこから日本がまた軍事大国の道にむかうのか、あるいは初めてにして最後の外国人殺害事件にするのかが問われている。
 しかし事件後、自民党の赤城徳彦議員は、「日本の領海内で発見されていれば、危害射撃が可能だった。領海外で見つけた場合も、危害射撃を可能にするように法改正すべきだ」などと発言している。このままの自民、公明、保守の連立政権の日本では、ますます軍事大国化の道をすすむようだ。
(「月刊 記録」2002年11月)

写真=色丹島1990年,Photo by Витольд Муратов, クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 ライセンス
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2013年11月11日(月) 09時34分 | | 編集


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