トヨタに“暴走" 隠蔽の旨味を教えた 20 年前の悪しき教訓①

 トヨタ自動車の豊田章男社長は、リコール問題についての米議会下院監視・政府改革委員会の公聴会で、「トヨタは過去数年間、急激にその業容を拡大してきたが、正直ややその成長スピードが速すぎたと感じている。
 もともとトヨタ経営の優先順位は、①安全 ②品質 ③量。この優先順位が崩れ、そのため我々自身が立ち止まって改善を考える余裕をなくした」と語った。その前にも彼は「トヨタは決して万能でない」などと弁明していた。自己批判しているようであるが、頭の下げ方が高すぎる。

 拡大スピードが速すぎて内実がともなっていないという批判は、以前からつづけてきた。トヨタの生産台数が急激に伸びたのは、張富士夫氏が社長をしていた2002 年からである。
 「同年に631万台だったグループの世界生産台数は、年平均60万台ペースで増加。07年には950万台に達し、米ゼネラル・モーターズ(GM) を抜き初めて世界一になった。この五年間で拡大した生産能力は、創業から四十年以上かけて築いた分に相当する」と、『東京新聞』(2010 年2月25 日)は報じている。

 こうした急速な展開が、1に利益、2に販売量、3・4 が安全・品質といった状況を招いた大きな要因の一つである。おかげでGMに追いついた途端に横転事故となった。
 豊田社長は「わたしたちは顧客の視点で品質問題を考えるという視点が足りなかった」ともいう。つまりユーザーの求める品質・安全ではなくて、メーカーがユーザーに押しつけていた、ということだ。だからこそ彼は「顧客の安全が最優先との視点から責任ある判断を下す仕組みを加える」とまで言及したのである。
 
         Toyota Tundra Crewmax ,public domain in USA.                JR西日本、福知山線での脱線事故,GNU Free Documentation License
 
 これは尼崎事故で107 人が死亡したなどで、「これからは安全第一だ」と宣言したJR西日本とおなじ姿勢である。JR西日本は、事故調査委員会の動向を秘密裏に探って、圧力をかけていたことが発覚した。その会社の姿勢が改めて問われたように、トヨタがこれまで安全第一でなかったことによる信用失墜の打撃は大きい。
 トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長は、急加速の原因として、アクセルがフロアマットに引っかかること、アクセル関連の部品がすり減って戻りにくくなることの2点をあげた。電子制御の問題になる前に、この2点で、この事態を終息させようという、トヨタ側の強い意思があらわれている。
 豊田社長も公聴会の質疑で「社内調査でも誤作動は見つかっておらず、設計上の問題ではないと確信している」と、電子制御システムの問題を明確に否定した。
 
 一方、米下院エネルギー商業委員会は、電子システムに重大な懸念があると主張。この問題をトヨタが継続的に退けてきたとも批判している。実際、04 年に電子制御を装備したカムリの速度に関する苦情は、電子制御のない車の5倍に上ると米運輸省が指摘したのに、トヨタは組織的な検証をしていなかった。
 トヨタの言い分が通るかは疑問だ。公聴会では、ジム・レンツ社長がマット交換とペダルのリコールで問題が解決するかと詰め寄られ、「完全にとはいえない」と答えている。自社の対応が不十分であることを認めたようなものだ。

 さらに米運輸省高速道路交通安全局に寄せられたトヨタ車による暴走の訴えには、リコール車以外の車種も半分含まれている。その上、フロアマットに問題がないのに、ブレーキを踏んでも止まらなかったケースさえある。
 公聴会では、アクセルペダルに足を乗せていないのに暴走、ブレーキを踏んでも止まらなかったという証言まで飛びだした。 〈この項、つづく〉

 
月刊「記録」10 年3 月号
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