「生命を大事にする運動」 福島瑞穂との対談

福島 私が初めて読んだ鎌田さんの本は『自動車絶望工場』(現代史出版会〉でした。 
 私が議員になるずっと前から、鎌田さんは国労支援の集会や冤罪の問題、働く人の問題など、ルポルタージュを中心に活動されてきましたが、今そうした現場を歩いていてどのようなことを思われますか? 

鎌田 以前から心配していた問題が、イラク派兵に代表されるように、ここ数年で表面に剥き出しになってきたように感じます。 
 国鉄労働組合などにたいする労組つぶし、狭山などの冤罪事件、成田空港反対連動、死刑制度、原発や六ケ所村の再処理工場などいろいろな問題に関わり、それを書き、報告してきました。
 個別に見ていけば緩やかな形ではあるけれど、住民運動は広がってきているのですが、政治全体ではぎゅっと煮詰まってきた。負けが込んできて、ハネ返せない。残念ですね。 

福島 そうですね。こんなことまで通ってしまうのかという事態が、前倒しでどんどん起きていますからね。 
 私は、自分が生きているうちに「憲法が改悪されるかもしれない時代」にまさにいるのだという思いでいっぱいです。もちろん、国会議員としてできることはなんでもやって、憲法を守りたいと思っていますが、そのためには何をすればいいのか。 

 それからもう一点ですが、鎌田さんが新聞の取材に応えて「社会不安が高まるなかで治安の問題が出てくる」とおっしゃっていました。
 アメリカはまさに弱肉強食の社会だけれど、強者の側の人間は、いつ自分たちの権益が奪われるか分からないからビクビクして、すごくストレスを感じるわけじゃないですか。不安でたまらないわけです。殺人の件数は25%も減っているのに受刑者の人数は全体として増えている。
 弱肉強食の社会によって二極分化の構造をつくってしまえば社会不安は増大するし、若い人たちには希望がなくなり、決してよいことはないのですけれども、日本は今所得の格差も資産の格差も拡大しています。そういった状況を、鎌田さんはどう感じられますか。 

鎌田 やっぱり格差が極端に広がっていると感じます。
 共感とか共鳴とか思いやりという感情を捨てて、自分だけが生き残ればいいという獰猛な意識が、日本の社会のなかで露骨になってきたのだと思います。  

 取材をしたわけではないのでハッキリしたことは言えませんけれど、川崎でホームレスの施設をつくることについて、地域の住民が反対しているというニュースがあります。 
 ホームレスは犯罪者でもなんでもない。ホームレスを支援する公共の施設というのは、本人たちにはあまり評判がよくないけれど、それでもケアをする施設は多いに越したことはない。 
 しかしホームレスが集まる施設というだけで反対運動が起こってくる。つまり、市民社会、人間のなかにある許容範囲が狭くなっているのです。
親の許容範囲が狭いとそれ縮小再生産されて、子どもの許容範囲はもっと小さいものになってしまいます。 

 どんどん許容範囲が狭くなってきて、大人は異質であるものを排除するし、子どもは簡単に人を殺したりしてしまいます。 
 自分の鬱憤を周囲の一番弱いところに向けていくということがいじめ問題の根本ですけれど、そのことはホームレス襲撃事件にも現れています。(つづく)

『やさしさの共和国』花伝社、2006年9月

写真=福島瑞穂社民党前党首、2013年8月31日日比谷公会堂、編集部撮影
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