郵政民営化の現実

米国の期待に応えた民営化  
 
 現在の日本郵政公社は、郵便貯金銀行、郵便保険会社、郵便局会社、郵便事業会社、それらの持ち株会社である「日本郵政」に分割され、26万人の職員と土地や資産などが、それぞれに配分される。五人の社外取締役のひとりが、トヨタの奥田碩(おくだひろし)会長(日本経団連会長・当時)である。 

 2007年10月発足の「郵便局会社」(窓口ネットワーク会社)の初代社長は、トヨタ出身の高橋俊裕氏である。彼が2万4700の郵便局を支配する。トヨタ生産方式を導入して、ムダを省く合理化に成功した、との評価によった、という。 
 高橋氏は、民営化の方針を決める「経営委員会」にも参加するので、トヨタ生産方式が、民営化全般で指導力をもつことになる。この経営委員会には、持ち株会社の社長の西川善文氏も参加する。彼は前三井住友銀行頭取で、全国銀行協会会長を二度もつとめ、剛腕で知られている。 

 西川氏は、三井住友銀行頭取のとき、米国のゴールドマン・サックス社から、数千億円規模の資金を得て増資を実行した。
 ちなみにいえば、2005年10月から、郵貯が窓口販売をはじめた外資系の「投資信託商品」は、ゴールドマン・サックス社運用のものだった。 

 郵政公社の民営化には、米国の投資会社や保険会社の期待が大きく関わっている。零細な市民の貯金や簡易保険が、彼らに運用されるビジネスチャンスをつくるばかりではなく、分割、民営化された新会社の株式をあつかう、主幹事証券として、莫大な手数料もはいることになる。 

 ゴールドマン・サックス社は、NTTドコモが株式を上場したとき、主幹事証券になっている。米国の金融、証券、保険業界が待ちに待った解禁、それが郵政民営化であるのは公然たる秘密であって、小泉元首相はその「刺客」だった、といっていい。 

 西川社長は、就任前の2006年1月10日、JPUの新春交換会に、生田正治郵政公社総裁、久間章生(きゅうまふみお)自民党総務会長などと出席し、公社化で素晴らしい成果をあげているのに、なぜ民営化するのか、と自問自答している。
 彼は、物流、金融の分野での変革が激しい、公社が制約、規制を受け、手足を縛られたまま、民間との競争に勝ち抜いていくのは不可能だ、というのだが、それはけっして郵便局員や預金者のためにするわけではない。それだったなら、いまのままがいちばんいい。
 これまで、公的機関としての信頼によって蓄積された、莫大な資金のドアーをひらいて、口をあけて待つ、外資に放流する、ということなのだ。

『絶望社会 痛憤の現場を歩くⅡ』金曜日、2007年9月

写真=ウォールストリート埠頭、ニューヨーク、by NYCRuss,licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported
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