カネで問題解決をはかるトヨタ

 トヨタ自動車2010年3月期連結決算は、黒字となった。前期が4610億円の赤字だったから大幅な収益改善となる。
 ただ将来的にトヨタが安泰かというと、必ずしもそうではない。『フォーブス』が発表した10年の優良企業によれば、同社は360位と1年で3位から急落した。4月22日に発表されたムーディズの格付けでも、2番目の「Aa1」から3番目の「Aa2」に引き下げられ、格付け見通しは「ネガティブ」(弱含み)となった。格付けそのものに問題があるにせよ、価格競争での将来的な不安を理由とした降格は、同社にとって大きな不安材料である。  

 またリコール問題について、トヨタは米運輸省が課す15億円もの制裁金の支払いを決定した。ただ支払い理由としてあげたのは、論争の長期化による販売への影響だった。
 実際、同社は次のように法律違反を否定している。「社内外との情報共有に改善の余地はあるが、安全問題への対応を避けるために不具合を隠蔽しようとしたことはないと認識している」(『朝日新聞』10年4月20日) 

 一方、ラフッド米運輸長官は、「トヨタが法的義務に違反していた責任を受け入れたことに喜んでいる」(同上)との声明をだした。
 違法行為がなく不当だと思うなら戦うのが当然で、長期にもめそうだからカネで解決する、ただし問題は認めない、などという主張が認められるはずがない。米運輸大臣だけではなく、米国民も欠陥を認めたと解釈するだろう。

TOYOTA Camry at LA 今回の一連のリコール騒動は、同社の隠蔽体質と無縁ではない。メディアに広告を流し、政府の審議会などのメンバーに人を派遣すれば、さまざまな批判はかわせるといった意識が、今回の問題を大きくしたのである。その部分を「カイゼン」しないでカネで問題を解決しようとするのは、くさいものにはフタといった対処でしかない。
 今後、中古車の値段が下がったことなどにたいする民事訴訟も控えている。今回の決断が今後の訴訟に影響する可能性は十分にある。カネを支払えばいいといった姿勢は、大きなツケを生みだすだろう。 

 もう1つ気になったニュースは、トヨタの田原工場従業員がコンビニエンスストアで菓子パンやサラダなど724円相当の商品を万引きした事件である。所持金が170円しかなく、「腹が減って甘いものがほしかった」と供述したという。
 この事件を報じたのは三大紙では毎日だけ。犯人がどのような生活を送り食費に困るようになったのかはわからない。しかし紛争が長引くからと、15億円をポンと出す企業の従業員が飢えて万引きするまで追いつめられていた事実は見過ごせない。 

 今後、収益のカイゼンを理由に、トヨタでさらなる労働者いじめが発生する可能性がある。そうした企業姿勢を批判し、労働者の権利を守るメディアの力は、ますます重要になってくる。広告につられて企業を批判できないようでは、報道の存在価値を疑われる。(談)
「鎌田慧の現代を斬る」2010年5月4日
写真=米国トヨタ・カムリ、撮影 藤崎啓
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