オウム事件と原発事故がしめす教養の必要性③

10月6日付「オウム事件と原発事故がしめす教養の必要性②」の続きになります。

経済的な視点からの脱原発

 政府が公表した「エネルギー・環境会議」のコスト等検証委員会の公開データを使い、朝日新聞社が原発コストを試算している。
 発電量1キロワットあたり約7.7 円となり、経済産業省資源エネルギー庁が2004 年に発表した金額の4割高となった。2004 年に経産省が発表した価格は、火力発電の石炭火力が5.7 円、液化天然ガス火力が6.2 円、石油火力が10.7 円だ。つまり石炭火力よりは、原発が安いとされていた。
 
 しかも朝日新聞社が試算で加えた「発電リスクコスト」は、福島の事故後に内閣府の原子力委員会が発表したものを使っているが、除染費用などを考えると安すぎるという異論が委員会内からもでている。
 そのうえ、このような試算には自治体への交付金や建設のメドすら立っていない最終処分場の費用などが含まれていない。結局、最終的な金額は、どこまで高くなるかわからないのが実情だ。
 
 また(2011年)10 月末に開かれた内閣原子力委員会の小委員会では、使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクルの費用が、再処理せずに地中に埋める直接投棄の2倍になると発表した。
 そのうえ日本原燃の発表によれば、再処理工場の試運転は止まったままだが、1年延期すれば維持管理などの費用が1000 億円かかるという。すでに直接投棄の方が再処理より経済性が高いことが明らかとなっているのに、維持費に年間1000 億円をかけているのは正気の沙汰ではない。
 
もんじゅ2GNU Free Documentation License 
写真=高速増殖炉「もんじゅ」(GNU Free Documentation Licenseによる) 

 核燃料サイクルの一環であり、消費した量以上の燃料を生み出すことのできるとされる高速増殖炉「もんじゅ」についても、計画存続の是非が問われている。
 現在、もんじゅは95 年のナトリウム漏れ事故や10 年の装置落下事故により、ほとんど稼働できない状況となっている。どちらの事故もかなり深刻で、ギリギリで放射性物質の飛散を防いだにすぎない。それなのに維持費だけで年200 億円も要している。 
 11 月20 日にはじまった政府の事業仕分けでも、「1兆円以上の予算をつぎ込んだが、何の成果もない」(『読売新聞』2011 年11 月22 日)と酷評された。
 「これまで1兆円をつぎ込んで、あと40 年完成しないのに金をつぎ込む。続けていいのか」(『朝日新聞』2011 年11 月21 日)と仕分け人の玉木雄一郎・民主党衆院議員が疑問を呈したのも当然のことだ。
 
 にもかかわらず読売新聞の11 月22 日の社説では、「日本が高速増殖炉を推進してきたのは、ウラン資源の有効活用を目指しているからだ。今の原子炉では燃やせないウランを燃料に変えられる。資源に乏しい日本の将来を見据えている」などと論じている。
 福島でこれだけで大規模な原発事故があったにもかかわらず、危険を冒しても原発で乏しい資源を補おうという主張しているのは信じがたい。  

 福島を中心として広範囲の土地が放射能で汚染された。子どもへの健康被害を心配して9万人を超える福島県民が避難している。
 子どもの内部被曝は深刻だ。こうした現状を前にしても、経済界の要望に応え、既得権益を守るための動きが止まらないのが、日本政府の愚かさである。
「月刊 記録」2011年12月号
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