TPPで進む日本の植民地化

TPPをめぐる2011年11月の文章ですが、現在のインドネシア・バリ島での交渉過程と重ね合わせてみてください。

 民主党政権は、鳩山・菅と2回の短期政権を経て野田佳彦首相に引き継がれたが、ますます自民党政治と変わらない財界寄りの政権となっている。
 これは自民党に代わる新政権のどん詰まりであり、新しい時代を期待した民意を真っ向から踏みにじる愚かさの出発である。  

 TPPへの参加については、「仮に(TPP)交渉に参加した場合、交渉の中で新しい事実が出てきた。それが日本にとっては到底受け入れることのできないものであれば、その上で交渉から抜ける選択肢は私は当然持っておくべきと思う」(日テレニュース)と、前原誠司政調会長(当時)は語っている。しかし一旦、国策として方針を決めたのち、不都合だから止めるなど外交上の失政であり、できるはずもない。とにかく参加させようという甘言は、まるで子どもをだます誘拐犯のようだ。
 さすがに最大の旗振り役である経団連の米倉弘昌会長も、「離脱とは不穏当な表現だ。交渉入り後に途中離脱することはありえない」(『産経新聞』2011年10月24日)と批判している。  

前原誠司 しかしTPPに参加させたい意向は2人ともに一致している。前原政調会長は「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の慎重論、反対論の中には、事実に基づいた不安感と同時に、事実に基づかない議論もある。これを私は『TPPおばけ』と言っている」(『毎日新聞』2011年10月14日)と反対論を切り捨て、米倉会長は「怪情報が飛び交って国民の不安をかきたてている。非常にまずい」と語った。
 「おばけ」や「怪情報」といった決めつけは、初めから参加ありきの姿勢をあらわわしたものだ。 

 1978~1979年にかけて第1次牛肉・オレンジ自由化交渉がおこなわれ、日本は農産物の自由化へと踏みだした。そのため、せっかく植えたミカンの木を農業者が伐採する破目になった。もちろん温州みかんが買えなくなったわけではない。ただみかん果汁では、輸入オレンジの10分の1以下シェアしか確保できなくなっている。
 これまで米国は、工業製品の輸入で一定程度譲歩しながら、主力産業である農産物の輸出について圧力をかけつづけてきた。それにたいして日本はなすすべなく門戸をひらき、対抗策として農業の大規模化という方針を打ちだした。

 しかし日本の地形・風土を無視した大量生産計画など蟷螂の斧というべきものだ。大規模化を目指した畜産や酪農が撤退し、荒れ果てた牧草地が全国に出現している。
 米国の農業に日本が対抗しようなど、客観的に分析すれば笑い話でしかない。ところが真珠湾攻撃以来、まったく見通しを欠いた精神論だけで戦争突入、退却に次ぐ退却といった「日本の伝統芸」が戦後も繰り返されてきた。
 そもそも農業は商品をつくっているのではなく、食料を生産しているのである。農業の国際競争力を高めるといった発想は、食料を商品としてしか考えない財界人特有の誤りだ。

 しかも今回のTPPは、農業ばかりか医療やサービス、金融などあらゆる分野の自由化を目指すものだ。国内の体制が大きく変化するといわれているが、その詳細はいまだに明らかにされていないのである。外務省は「外交上の機密だからいえない」と、小出しにしか情報を開示しない。これは目隠ししてスタートラインに着けというに等しい。
 そもそもTPPは自由貿易協定(FTA)の1つである。FTAは関税ルールを二国間で決めるが、TPPは日本を除くと9ヵ国が交渉に参加している。しかし日本を加えた10ヵ国のGDPを比較すると、全体の90%以上を日米が占めるという。つまり実質的には日米のFTAなのである。「属国」日本を狙い撃ちした協定なのだ。
「鎌田慧の現代を斬る」2011年11月5日

蟷螂の斧(とうろうのおの)…力のない者が、自分の実力もかえりみずに強い者に 立ち向かうことの喩え
写真=前原誠司衆議院議員(amazon associate license)
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2013年10月10日(木) 07時04分 | | 編集


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