最近の新聞記事から「遷御の儀 安倍首相参列」(編集部)

 20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮「遷御(せんぎょ)の儀」は今晩クライマックスを迎えるが、2日安倍首相は、8人の閣僚と昭恵夫人をともない、儀式に出席した。
 
伊勢神宮 お祓い 他の多くの新聞が参列の事実を伝えるにとどまるなか、朝日新聞は3日朝刊で、首相参列をめぐって、参列した他の8閣僚名とともに、やや踏み込んだ内容の記事を掲載している。
 「菅義偉官房長官は2日の会見で「私人としての参列だ。国の宗教活動を禁じる政教分離の原則に反するものではなく、本人が個人的に参拝したものだ」とし、問題ないとの認識を示した」とする政府見解をしめす一方で、「日本キリスト教協議会の靖国神社問題委員長、坂内宗男さん(79)は「憲法に定められた政教分離の原則に反する行為だ。非常に深刻に受け止めている」との批判」。
 さらに宗教行政論の大原康男国学院大学名誉教授は、「憲法が定める政教分離原則については、「津地鎮祭訴訟」最高裁判決(1977年)で、目的として宗教的意義を持ち、宗教に対する援助や助長などの効果がある場合に違憲になるという考えを示した」ように、政教分離は憲法にもとづき遵守すべきだとしながらも「日本の歴史や伝統、文化に鑑みて首相が参列するのであれば、特定の宗教を援助や助長、促進することにならないから憲法違反ではない」とする見解を示している。

 一面のほぼ半分を、この問題にあてたのは、東京新聞(10月4日)だった。
 政治評論家の伊藤惇夫氏の分析として、「私人としたのは『政教分離に抵触する』という認識があるからだろう」。
 そして「首相は二十四時間、三百六十五日、首相。公務なのは明らか。むしろ問題は、支持率の高い安倍首相を誰も止められない政治状況だ。日本人、日本国家といった概念を重視して自分の意志で出席したのだろうが、五輪招致成功というツキも味方してイケイケの雰囲気だ」と現在の風潮に便乗して、憲法や政治の基本ルールが踏みにじられることへの懸念を示している。

 一方、「戦時中、国民の戦意高揚に国家神道が使われた反省から戦後、極端に政教分離が強化された。元来、神社仏閣好きな日本人にとって参拝は信仰というより習慣だ」と、政治家の初詣などのお伊勢参りに一定の理解をみせているのは、政治評論家の森田実氏である。
 森田氏は60年前の砂川米軍基地反対闘争の学生リーダーで、米軍に対して、対アメリカ従属政治に対して、痛烈な抵抗をおこなった人物である。
 しかし森田氏は、安倍首相の遷御の儀参列には、違和感をもつ。
 「麻生太郎財務相ら閣僚をゾロゾロと従えて出席しておいて、『私人』は通らない。正月の首相の伊勢参拝も厳密には問題があると思っているが、今回の参列はさらに、一歩進んだ。節度がなくなっている」
 そして伊藤氏同様、安倍政権に無批判に同調する現在の風潮に対する懸念は深い。
 「憲法に抵触する可能性があるのに騒がず、静かなのが怖い。このまま国民が黙っていると、集団的自衛権の問題や特定秘密保護法案などで突っ走りそうな気がする」

 2009年、奈良県桜井市にある纏向(まきむく)遺跡から宮殿とみられる大きな建造物の遺構が発掘された。崇神、垂仁両帝の時代の宮殿跡と考えられている。
垂仁天皇陵  この時代に、伊勢湾に面し、海からのご来光を拝める地の背後に伊勢神宮が建立された。祭政分離のためである。大和の都からは約150km東(ひむがし)に位置する。古代以来、政教分離が重要な課題だったことをがうかがわせるエピソードだといえよう。
 奈良・西ノ京、南都七大寺としてかつて栄えた薬師寺、唐招提寺を過ぎ、北へ向かえば、住宅街や田畑のなかにはば百数十mばかりの古池があり、そのなかに木々が生い茂ったこじんまりとした森が佇み、周囲の景色に違和感なく融けこんでいる。
 離れて眺めると、濠に囲まれた前方後円墳であることがわかる。垂仁天皇陵である。


photo taken by N yotarou 「伊勢神宮、お祓い」under license of GNU
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2013年10月06日(日) 08時50分 |

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