米軍の監督義務を日本が負う

12月16日付「横須賀・イラク 女性や子供たちの叫び声」の続きになります。

 JR横須賀駅のすぐ前から展(ひら)けている入り江には、米軍の艦艇や潜水艦が碇泊(ていはく)し、すこし離れて海上自衛隊の艦船が並んでいる。
 わたしは、問題のキティホークを一目みたかったのだが、見当たらなかった。前日にどこかへ出航していった、という。 

 2006年10月20日、横浜市中区日本大通の横浜弁護士会館で、記者会見がおこなわれていた。
 元米兵に殺された佐藤好重さんのふたりの息子と彼女の婚約者とが、犯罪者の元米兵と日本政府を被告として、損害賠償請求の裁判を起こしたのだ。 
 在日米軍は、旅券、査証、外国人登録やその管理に関する日本の法律の適用から除外されている。米軍が基地の使用権、管理運営権、警察権などをもっているため、日本の行政警察権は、大幅な制約をうけている。

 だからこそ、在日米軍は、自律的統制を必要とし、米兵を監督する義務を負う。
 ところが、罪を犯す高度の蓋然性があるのに、上司がそれを予測し、防止する、という注意義務に違反する違法行為があった。 
 日米地位協定にもとつく「民事特別法」によって、米兵の公務中の違法行為による損害は、米軍に代わって、日本政府が損害賠償責任を負う、と定められてある。 

 記者会見に出席した山崎正則さんは、背筋のしゃっきりした人物で、いかにも篤実なバスの運転手の風貌である。被害者とは、職場で知りあっていた。
 損害賠償の裁判は、たいがいカネ稼ぎとの悪評を浴びがちだが、それも覚悟のうえ。 
 「二度とこのような悲惨な事件を起こさせないためにも、米兵個人を罰するばかりではなく、米軍の監督責任を追及したい」と彼はいう。 

 警察ははじめのうち、山崎さんを犯人と疑った。出頭させて、午前2時まで尋問し、家宅捜索までおこなっていた。
 一方、さっそくやってきた防衛施設庁の課長は、いくらでもいいから、ここに金額を書いてください、と領収書を取りだした。米兵の交通事故などでもよくやる手慣れたやり口である。 

 米海軍横須賀基地の前で写真を撮っていると、フェンスのなかから、警備を担当している、迷彩服姿の若い自衛隊員がでてきた。 
 「基地のなかは写さないでください。米軍を刺激しますから」 
 いつの間にか、基地のゲートさえ撮影禁止になってしまっている。これだけ、公然と日本の領土を占拠し、住民に被害を与えていながら、その存在自体が秘密の基地にされていく。にもかかわらず、若い米兵やアメリカ人家族たちが、その周辺をさかんにあるきまわっている。頭隠して尻隠さず、というべきか。 

style=  横須賀港には、2008年、キティホークに代わって、原子力空母「ジョージ・ワシントン」が配備される計画がある。
 約40万キロワット級の原発が、大都会のそばの海上に置かれることになる。軍事施設だから、原発よりもさらに危険だ。 
 2006年9月には、横須賀港の海水から、コバルト60などが検出された。出港していった原子力潜水艦から排出された、と推測されている。 

 米軍の極東・中東の軍事戦略に従属している日本の基地は、これから、米軍の世界戦略強化のための一方的な再編と日本を戦争にまきこむ日米共同作戦によって、ますますキナ臭いものになっていこうとしている。 
 2007年7月5日、横須賀市内のアパートで、日本人2人の女性が、19歳の米兵に刺傷される事件が発生した。

『痛憤の現場を歩くⅡ 絶望社会』金曜日、2007年9月


写真=横須賀に入港する原子力空母ジョージ・ワシントン、アメリカ海軍、パブリック・ドメイン
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