市民たちのメディアが力を持ち始めた

 大マスコミが急速に信用を失った理由は、(福島原発事故で真実を報道しなかったことの)ほかにもあります。どこか権力的で、透明人間的(中立的)で、市民感覚から離れてしまったのです。ですから、旧来の大マスコミに代わるものを求める声はますます高まってきて、それに対応する新しいメディアが現れてきたのです。 
 たとえば、フェイスブックやツイッターなどを通じて、さまざまな市民グループによる調査データが流れるようになっています。ニコニコ動画などの動画共有サービスでは、記者会見をノーカットで見られたりするのです。 
 「ソーシャルメディア」や「オルタナティブメディア」など、これらの総称はいくつかありますが、旧来のマスコミに代わるいろいろな「市民たちのメディア」ということができるでしょう。何千万人という人々が日常的に接する大マスコミからすれば、とても小さな規模ですが、大きな力を持ち始めているのです。 

 そのことを実感したのが、2011年9月19日に東京・明治公園で行った「さようなら原発1000万人アクション」集会(以下、9・19集会)です。 
 この集会は、わたしのほか、ノーベル文学賞を受賞した小説家の大江健三郎氏、経済評論家の内橋克人氏、音楽家の坂本龍一氏、作家の澤地久枝氏など九人が呼びかけ人になったもので、当日は、6万人を超える人々が集まりました。
 最寄りのJR千駄ヶ谷駅は、プラットホームまで人で溢れかえってしまい、危険を避けるため、電車が停止せずに通過したと伝えられています。 

記者会見 9・19集会に関しては、事前に二回の記者会見を開きました。初めは6月15日でした。集会呼び掛け人のひとりで澤地さんと内橋さんとわたしの3人が出席しました。このとき大きく取り上げたのは東京新聞だけで、ほかは少々。驚いたことに、朝日新聞や読売新闘の当日夕刊、翌日朝刊には何も載りませんでした。
 朝日新聞は、6月15日は記者が誰1人来ておらず、後で慌てて電話をかけてきて小さい記事にしたりしました。 
 次こそはと意気込んで、9月6日に2回目の記者会見を開きました。大江さん、日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏、集会呼び掛け人の1人で作家の落合恵子さんとわたしが出席して、9月8日の「さようなら原発講演会」と9・19集会について述べました。このときは、朝日新聞の記者が4人来たので、「今度は入るだろうね?」と尋ねたのですが、「いやー」と煮え切らない返事をします。
 結局、ようやく東京地方版に取り上げられたのです。わたしにいわせれば、ノーベル賞作家が原発問題で記者会見を開いたら、それは大ニュースですからきちんと扱うべきで、意識的に冷ややかでした。 
「人々に共感されるジャーナリズムを」『現代社会再考』水曜社、2013年1月
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