ヤミの労働者

 「外国人研修失跡、途中帰国1万2700人」  
 『東京新聞』2008年10月10日朝刊の見出しである。会計検査院の調査によれば、厚労省は、2006、2007年度で、「発展途上国への技術移転」を目的とした、外国人研修・技能実習制度」の運営委託先である財団法人(この記事では、名前が特定されていない)に、約7億3000万円を支給していた。 

 しかし、その2年間に研修・実習生として入国した20万3000人のうち、受け入れ先の企業から失踪したり途中帰国したりしたものは、1万2700人にものぼる、という。 
 このため、検査院は厚労省に雇用状態を把握し、効果が上がるように改善をもとめた、という記事である。しかし、2年以内に5パーセント以上のひとたちが途中で挫折する、というのは異常である。この制度では、最初の1年間は「研修」、2年目からの2年間は「技能実習」として、工場や農家などで働くことができる。 

ベトナムの群衆 建前としては、研修生は労働者ではない。あくまでも「研修生」である。だから雇用契約はなく、労働基準法や最低賃金法の適用は受けていない。受け入れ先の日本の会社は、それをいいことに、かれらを労働法が適用されない労働者、ヤミの労働者として使っている。
 一方の送り出し側の外国の企業はそれを承知でひとを集め、実際は出稼ぎ労働者として送ってくる。
 おたがいの政府が、「研修」の美名の衣を纏(まと)わせた「偽装研修生」として、入国管理局(入管)を潜り抜けて、入国させ、労働者として使用するのを黙認しているのである。

 わたしは、名古屋市郊外の自動車用電機部品(プリント基板)を製造しているM社の取材に行ったことがある。M社は2007年11月に、突然、仕事が減ったとの理由で、ベトナム人9人を解雇した。

 それに抵抗して残っていた3人は、1年の「研修」と1年の「実習」を終え、もう1年働けるはずだった。 
 相談を受けた愛知県労働組合総連合(愛労連)の榑松(くれまつ)佐一事務局長は、雇用保険の手続きをしたり、ビザを更新したり、新しい職場を探したり、大忙しだった。
 そのゴタゴタのさなか、M社が契約書では6万5000円だった「研修手当」を、6万3000円しか支払っていなかった、という事実が発覚して、「不正裁定処分」となった。 実習生の契約を更新させない、という入管の対応だが、外国から収入をもとめてせっかくやってきた労働者にしてみれば、働けなくなって打撃を受ける。

『いま、逆攻のとき』大月書店、2009年5月

写真=ベトナムの少年,Photo by Philip Jones Griffiths,Creative Commons license
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