「終わらない公害」

 今年になってから、富山市と水俣市にでかけて「未認定」という言葉について考えさせられた。 
 ふたつの市は、イタイイタイ病と水俣病、このよく知られている公害病患者の映像によって、記憶されている。 

 といっても、それは、この二つの「奇病」が公害による、と政府が認定した1958年に、小学生以上だった人たちの記憶であり、それもヒロシマやチェルノブイリとおなじように、時間とともに風化しているのは疑いない。
 それでも、三井金属とチッソのコスト削減の操業が、猛毒を垂れ流し、いまなお、多くのひとびとの身体に潜んで、苦しみを与えている。 

 68年当時、テレビや雑誌や新聞は、神通川流域の農村女性や不知火海のほとりに住む漁民一家にあらわれた被害をさかんに報道した。カドミウムによって骨が脆くなって折れ、身体が萎縮したイタイイタイ病の痛々しさや、有機水銀によって手首がよじれ、身体が激しく痙攣(けいれん)する水俣病の姿は衝撃的だった。その映像の強さが、政府に重い腰をあげさせた。 
 が、悲惨さが強調されすぎたため、まださほど外見にはあらわれない潜在的な患者は、公害病に認定されなかった。むしろ、「ニセ患者」「補償金狙い」として攻撃された。 

 補償金削減のため、「認定基準」を厳しくし、「非認定患者」を大量発生させたのは、公害の論理の延長であり、政治的犯罪である。
 
『いま、連帯をもとめて』大月書店、2007年6月
写真=高山本線の鉄橋から撮影した神通川,Photo by ネプチューン,public domain


昨日12月17日、イタイイタイ病の被害者団体と三井金属が合意して、ようやく救済問題に決着がついた。朝日新聞の記事を引用する。

イタイイタイ病をめぐる経緯
 富山県神通川流域で発生したカドミウム汚染による公害病・イタイイタイ病で、原因企業の三井金属(本社・東京)と地元の被害者住民団体は17日、これまで賠償対象でなかった腎臓障害「カドミウム腎症」発症者の救済を盛り込んだ合意書を交わした。被害者側は、求めていた救済問題が決着したとして、三井金属の謝罪を初めて正式に受け入れた。
 合意内容では、1975年以前に汚染地域に20年以上住んだことがある人のうち、腎機能悪化の指標であるたんぱく質の尿中濃度が一定値以上の人を対象に、三井金属が健康管理支援の名目で、1人あたり一時金60万円を支払う。居住歴を満たすのは約8千人で、対象者は数百人程度が見込まれる。来年4月から申請を受け付ける。[引用ここまで]


この決着はひとつの指標になる。水俣病、そして福島原発事故の補償問題など、企業および行政側の責任を明確にして、すみやかな解決を図るべきである。病気で苦しむ被害者が死ぬのを待つような引き延ばしは許されない。(編集部)
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2013年12月19日(木) 09時21分 |

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