トヨタに“暴走" 隠蔽の旨味を教えた 20 年前の悪しき教訓

 米国議会の怒りに油を注いだのは、北米トヨタの稲葉良社長名で作成された社内文書だ。07 年にカムリなどがリコールされた際、ロビー活動によって備品であるフロアマットが原因となり、費用を1億ドル以上節約できたと、そこには書かれていた。
 この文章が本物かと公聴会で追求された豊田社長は、「ここに書かれている英語がわからない」と明言を避けた。これではトヨタの“隠蔽体質”を疑われても仕方があるまい。
 また、そうした企業体質をうかがわせる事実もある。
 
 07 年3月には米国で、08 年12 月には欧州でアクセルペダルの不具合にかんする苦情が寄せられていたのに、米国でのリコールは10 年1月だった。米国で一家4人が暴走の末死亡した事故から3ヶ月以上たってからだ。
 加えて、元連邦政府の安全調査官がトヨタに天下りしてことで、連符政府の調査がかなり限定されたものになった、とABCニュースは報じている。
 自社のみならず、政治力を使っての隠蔽など、トヨタへの疑惑が膨らむ一方である。問題はこうした「体質」は、労働者と下請、孫請会社をいじめた過剰生産をつくりだした。「安全第一」から「世界第一」へ急カーブを切っていたのだ。

変節した運輸相
 ここで改めて振り返ってもらいたいのは、80 年代末に起こったオートマチック(AT)車による暴走事故である。
 運輸省がまとめたAT車の暴走件数は、83 年は39 件、84 年44 件、85 年62 件、86 年67 件にとどまっていた。AT車の暴走が騒がれはじめた87 年は、430 件と急増している。このときはトヨタだけではなく、日産・ホンダ・三菱・マツダなど日本のほとんどの自動車メーカーに加え、外車の暴走も指摘された。しかしメーカー各社は、アクセルとブレーキの踏みまちがいだとして自社の不備を認めることはなかった。

 それでもドイツのフォルクスワーゲン車と日産が提携して生産した車が、電子部品の不具合からエンジン回転数が上がる不具合が露呈。日産は部品の無料交換をおこなった。
 こうした事態を受けて、構造上の欠陥はないとして主張しつづけてきた日本自動車工業界も、業界として初の調査に乗りだした。しかし2年ばかり調査して結果は「急発進・急加速現象が全AT車に共通に起こる構造的な欠陥はなかった」というものだった。
 
 このとき同工業会の会長だったのが、豊田章一郎トヨタ自動車社長である。
暴走問題の原因調査に乗りだした旧運輸省は、中間報告で急発進・急加速の事故や苦情261 件のうちの約半分が、運転手の捜査ミスとは考えにくいと指摘。それなりの気概はみせた。
 ところが、その報告から1年後の最終報告では、「ブレーキ操作が適切なら車は止まる」という消費者をバカにしたような結論を導きだす。しかも実車テストに実際に暴走した車を入れなかったうえ、苦情や事故の4分の3を「原因不明」としたままなど、調査の妥当性を疑わせる報告となった。 〈この項、つづく〉
月刊「記録」2010年3月号
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