人々に共感されるジャーナリズムを

12月9日付「重要な情報を報じなくなった大マスコミ」の続きになります。

 放射線が健康にどう影響を及ぼすのか。今、多くの人が関心を持ち、知りたがっています。健康のことは、これから長期的に取り組んでいく問題になるでしょう。たしかに、放射性物質がどこまで拡散しているのか判然としないなかで、何をどこまで報道していいのかの判断は難しい問題です。
 それに、原発立地点の自治体や隣の浪江町、さらに風下になった飯館村の人々にしろ、原発で働いている人々にしろ、原発周辺の逃げ遅れた人々にしろ、彼らの被曝がこれから肉体的にどのような被害をもたらすかは、誰にも予測できません。
 だからこそ、既存の大マスコミは、目を背けているのだとわたしは推測しています。 

 放射性物質の拡散とその問題について、もっとも早く取材したのは、5月15日に放送されたETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~』(NHK)です。
 素晴らしい番組で、多くの人々が衝撃を受けたと思います。 

 しかし、考えさせられるのは、この番組をつくった人たちが、3・11後、一週間ほどで情報を得ていることです。つまり、かなり早い段階で「放射能汚染地図」の実態を把握していた。しかし当時、NHKは、その内容をニュースで報道することなく、「直ちに健康被害が出ることはありません」との政府発表を垂れ流していました。
 番組の中で、線量の高い場所に留まっている人々にそこからの退避を促す場面があります。しかし、番組が放送されたのは、その場面の約1カ月後なのです。 

 危険が明らかになったのなら「逃げろ」と叫ばなくてはなりません。ですから、ニュースで報道すべきだったと批判することはできます。報道しなかった理由はわかりません。
 しかし、報道してしまうと、番組がつぶされてしまうかもしれないという思いが、あったかもしれません。
 報道するよう頼んだのに、何らかの理由で報道されなかったかもしれません。たとえ放送までに1カ月かかったとしても、人々が知りたいことをしっかりと追求し、番組にして世に送り出したからいいともいえますが、難しい問題です。
 マスコミが真実を報道できなかった一つの例題です。
「人々に共感されるジャーナリズムを」『現代社会再考』水曜社、2013年1月

写真=2011年4月11日浪江町, Photo taken by Steve Herman、voice of America,public domain
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