親密な米中関係と日本

Obama_Jiabao in Copenhagen 2011年オバマは中国の胡錦濤国家主席の訪米を、「今後30年間の基盤をつくりうる」と評価したというから、並々ならぬ歓迎ぶりだった。一方の胡主席も「前むきで協調的、かつ包括的な関係を進める」と語り、〝相思相愛〟ぶりを見せつけた。 
 その訪米では、米ボーイング社による旅客機売却など計450億ドル(約3兆7000億円)のお土産つきで、財界を喜ばすことに必死なオバマ大統領をアシストした。
 一方で、中国はフランスや日本などの先発国と競うために、ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同で米国内での新幹線建設を計画している。2010年12月には中国の車両メーカーである中国南車とGEが、米国内に合弁会社を設立。新幹線のような中国の経済スピードを象徴する出来事といえる。  

 菅政権がいじましく米国のご機嫌をとっている間に、米国はすでに日本よりも巨大な経済的利益の道を中国に切りひらいている。たしかにオバマ政権は中国の人権問題を批判したりしているが、これまで米国が世界でやってきた無数の虐殺行為を見れば、中国の人権問題を批判する権利などあるわけがない。
 そのことを知っている胡錦濤主席は、人権問題にたいする記者の質問にも、一度は回答しなかったことについて、通訳の問題で聞き取れなかっただけだと余裕をみせ、「中国国内でなすべきことはまだたくさんある」(『朝日新聞』2011年1月21日)と門前払いではなく、人権問題に正面からむき合った回答を用意した。

  これは人権問題に敏感な米国へのリップサービスだったといわれる。ただし人権より経済発展に軸足を置いている状況に変わりはない。一党独裁体制によって、国と地方の財政を総動員して10%以上の経済成長を進めている現状は、当分つづくと予想され、あたかも国家資本主義の猛走となっている。
 中国の人権は21年前の天安門事件であきらかになったように、ずっと弾圧されつづけている。しかも現在は経済成長とインフレによって、下々の生活が厳しく、一部では飢餓が発生するほどになっている。

Jasmin Revolution これは植民地解放のあと独裁政権がつづき、30数年ぶりで民主化運動がはじまったチュニジア、エジプト、ヨルダンの動きと関連づけて考えられる。昨年末、チュニジアの首都チュニスに行ったとき、そこで会った日本に留学経験のある実業家は、ベンアリ大統領一家の専横について話しつづけた。
 彼はスーパーマーケットにさしかかると「これは大統領夫人のものです」といい、ビル工事を請け負っている建設会社の名前を見ると「これは大統領の息子のものです」というし、自動車ディーラーを指さしては「これは大統領一家のものです」と語った。国内のすべての企業が大統領一家に関連あるといって笑う。
 彼の話によれば、ベンアリ大統領は軍政権を引き継いだときに教育政策だけには力を入れたという。そのため彼のように海外に留学する青年が多かった。今回のジャスミン革命の中心となっていたのは、そうしたインテリたちだったから皮肉だ。
 
 中国も経済成長を維持するために、米国を中心に多数の留学生がいる。近い将来、そうしたエリートが経済政策をつくっていくことになる。彼らが一党独裁に疑問を抱き、民主化運動を支えていく可能性は高い。これまでの民主化運動の中心は、北京大学などの国内育成エリートだったが、それに変わる革命分子を中国は内部に抱え込むことになる。
 経済発展しようとすれば、民主化せざるをえない。軍政から民主化にむかった韓国の歴史が、それを証明している。チュニジアの問題は北西アフリカのマグレブ諸国の問題と考えられており、中国に波及していく可能性が見落とされている。隣国の民主化に期待したい。(談)

「鎌田慧の現代を斬る」2011年1月

写真上=オバマ大統領と胡錦濤前国家主席,2009年12月,in the public domain
写真下=チュニジア、ジャスミン革命、2011年1月,クリエイティブ・コモンズ CC0 1.0
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