本音のコラム 13/11/26 「フリーのため息」

 わたしが駄々をこねていると、思いあまった母親は「憲兵が来るよ」といって脅かした。戦争中のことである。
 いまなら「お巡りさんが来るよ」というのだろうが、民主警察の現在、これで泣きやむ子どもはいない。 

 なぜ、母親が憲兵隊を引き合いにだしたかはわからない。庶民にとって「泣く子も黙る」恐怖の存在だったからであろう。
 まだ、天下の悪法「特定秘密保護法案」に無関心なひとたちがいるのは、戦後68年、戦時中のことなど知らない世代がふえたからだ。 

 しかし、副総理の麻生さんが、祖父の吉田茂元首相が米国との和平工作に加担した疑いで、憲兵隊に逮捕、投獄された事実を知らないはずはない。
 安倍首相の祖父岸信介氏は、戦争中、満州国の最高幹部のひとりであり、東条内閣の閣僚だったから、憲兵隊に守られるほうだった。 
 だから、孫の安倍さんは「秘密漏えい」を理由に取り締まられる恐怖など想像することもない。あの振り払うような物言いを耳にすると、自分に都合のいい意見だけを聞き、意見の違う人たちから学ぶなどとは縁がなかった、と考えたりする。 

 「秘密」が幅をきかせ、報道に厳罰が加えられる時代になれば、わたしのようなフリーライターはお手上げだ。「正当な取材」の官製情報を書いているのでは、フリーライターの存在理由はない。
(東京新聞、11月26日)
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