「種を蒔く人」、雪の秋田から

種まく人 1850  新幹線秋田駅から20分ほど。土崎港の商業施設での「さようなら原発集会」に出かけたのは、「種蒔く人」に関心があったからだ。 

 翌朝、ホテルにラジオ局に勤めている年少の友人が迎えに来て、図書館前に建っている顕彰碑の前に立つことができた。横なぐりの雪が、雑誌をかたどった碑面にたたきつけていた。 
 「種蒔く人」第1号の表紙は、岩波文庫でよく知られているミレーの農夫の絵を模したもので、「自分は農夫のなかの農夫だ」「自分の綱領は労働である」というミレーの言葉を刻んでいる。 

 土崎出身のフランス文学者・小牧近江が、おなじ小学校出身の小説家である金子洋文や今野賢三などと発刊した、反戦と労働運動の雑誌「種蒔く人」は、日本のプロレタリア文学運動の一頁を飾っている。
 大杉栄や荒畑寒村などの「近代思想」とほぼおなじ、1910~20年代の文学運動だが、いわば東北のちいさな港町の出身者たちが、地元ではじめた文化運動として意昧が大きい。 

 土崎港の空漠たるヤードに積まれた、貨物船に載せるコンテナのうえに、雪が降りしきっていた。いよいよ北東北に本格的な冬がやってきた。 
 前夜の集会で、原発のない秋田県でも、雪にめげず「さようなら原発1000万人署名」運動に取り組んでほしい、と訴えたのは、脱原発運動はいまや全国民的運動になったからだ。
『怒りのいまを刻む』七つ森書館、2013年3月

画像=ジャン・フランソワ=ミレー「種まく人」1850年,ボストン美術館所蔵
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