血税でつくられたトヨタ空港

 中部国際空港会社は三代つづけてトヨタ系列の社員が、社長に座っている。その中部国際空港が09年3月の赤字を受け、トヨタグループの空港貨物を8割まで高める計画を発表した。

 黒字化に邁進する社長のトップセールスが実った形のようにもみえるが、よく考えてみればおかしい。8割もの貨物を扱うなど、すでにトヨタの物流センターである。
 もともと需要があるかもあやしい新空港を国費と県費を使ってつくりあげ、それをトヨタが支配。中部国際空港をトヨタの海外出張と海外輸出の拠点とするなど、税金で「トヨタ空港」をつくったようなものだ。一企業のために血税が大量に投入されるなど許されない。 

 富士山静岡空港も開通したが赤字が見込まれている。赤字転落するほど需要のない空港がどうして日本中につくられるのかといえば、巨大な土木工事の利権が絡んでいることはまちがいない。
 しかし、もう1つの大きな理由は戦争に使いやすいからだ。物資運搬や緊急着陸にも便利で、米国の圧力もかなり強かった。旅行客の需要はそんなに増えていないなのに、空港だけがめったやたらに作られているのは、きな臭い。そんなきな臭さも自社の業績のために利用するところがトヨタ的だ。 

 その一方で、トヨタの余裕はますます奪われてきている。ハイブリッドカーの代表格であるプリウスについて、トヨタは新型発売にともない旧型となるプリウスを40万円以上も値下げし、189万円で販売することを決定した。ホンダのハイブリッドカー「インサイト」と同価格にするためだ。
 またメディア向けの新型プリウス発表会では、ホンダの「インサイト」(注1)のエンジンシステムを揶揄(やゆ)する寸劇まで披露。さらにプリウスのカタログにも露骨な比較広告を入れたと『週刊ダイヤモンド』が報じている。

 トヨタにとってプリウスは利益回復の切り札といえる。だからこそ安値で挑戦してきたホンダにたいして、トヨタは並々ならぬ敵意を燃やしたのだろう。これまで同業他社にこそ牙をむかなかったが、もともとトヨタは自社の労働者や系列、下請けにはことのほか「好戦的な」企業である。気に入らなければ、完膚無きまでに追いつめるのはお家芸ともいえる。
 豊田家への大政奉還(注2)も済み、是が非でも売上げを確保したいトヨタは、今後もさまざまな牙をむきつづけるはずだ。それこそがトヨタの本質だが、この企業の犠牲者がこれ以上ふえないよう監視する必要はある。
「鎌田慧の現代を斬る」2009年6月

注1:インサイト…ホンダの最初のハイブリッドカー。人気は高くなかった。しかし、2013年に売り出されたフィット・ハイブリッドは月間売上一位をこの数ヶ月間記録し、トヨタ車を越える人気を獲得している。
注2:豊田家への大政奉還…2009年6月、創業者豊田佐吉直系の曾孫章男が11代目社長に就任した。就任後約半年で800万台がリコールになるなど、新体制はきびしい船出となった。
写真=名古屋セントレア空港,PHOTO taken by Chris73, Wikimedia Commons
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最近のニュースから 「靖国参拝強行の夜、首相と会食」(編集部)

 「赤旗」12月28日(土)は「参拝の夜に首相と会食 首相の靖国神社参拝強行―」の見出しで、大手新聞社の幹部が安倍首相と26日の夜に会食したことをスクープしています。

 戦後の国際秩序に挑戦し、東アジアの緊張を激化させる暴挙に、国際社会と国際ジャーナリズムがいっせいに批判の声を上げました。その中で、事件の張本人と日本のマスコミが、夜の酒宴に花を咲かす姿には、強い疑問が投げかけられて当然です。 
 安倍晋三首相は靖国神社参拝を強行した26日夜、報道各社の政治部長らと東京・赤坂のホテルで2時間以上にわたって会食しました。首相は夜9時前にホテルを出ましたが、政治部長らはなかなか姿を見せませんでした。[引用ここまで]

 この決してあってはならない大手新聞社の姿勢は、事実、翌日の新聞の論評で「日本のために命を犠牲にした英霊に尊崇の念を表する首相の動機は大事」(毎日新聞)といった提灯記事に反映しました。
 クオリティペーパーとしての新聞は、政治権力の暴走や恣意的な支配を監視し、国民の大多数の側に立った報道を行う「社会の公器」でなければ、存在理由はありません。国家権力に唯々諾々と従い、以心伝心で政治権力者の思惑に沿った報道・論評をするなど、彼らにはジャーナリストとしての気概や職業意識があるようにはとても見えません。

 だいたい各紙の政治部長でありながら、近代史の最低限の共通理解すらもっていないのでしょうか。靖国は軍国主義(ファシズム)勢力に利用されてきました。そして若くして死ななければならなかった戦士の無念の思いがこめられた場所に、侵略を強引に推し進め、彼らになかば死を強要した戦争犯罪者たちが合祀されているのです。
 それは、決して繰り返すことの許されない愚かな戦争の正当化にもつながる負の側面をもっています。国土を荒廃させ、多くの国民の生命を犠牲にしたばかりでなく、東アジアや東南アジアの国々への侵略行為を正当化し、おまけにかつて植民地にした国々の戦士の霊をも祀っています。そんなことを異国の霊が望んでいるはずもありません。

 大手新聞の方々に必要なのは、ときの政治権力に阿る(おもねる)ことではないはずです。権力から距離を保ち、深い教養に裏づけられ、国民や世界の平和や安定のために必要な報道をたもっていくことがなにより重要なのはいうまでもありません。
 かつてのファシズム体制のもとで、全滅しても勝った勝ったという大本営発表をたれ流し、ウソの報道で国民を欺いてきた、あの二の舞を繰り返してはならないという自覚を、もってはいないのでしょうか。高い使命感をもつことをこころから期待します。 (編集部・藤崎)

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